【飛騨金山駅 / 夜の散歩】(岐阜県下呂市)ゲーム『SILENT HILL f』のモデルとなった、迷宮のような筋骨路地

滋賀県から岐阜県へ移動してきた。目指したのは住所的に岐阜県下呂市金山町。小さな山間の街。 その金山町にあるJR高山本線・飛騨金山駅。開業当時から時が止まったかのような、重厚な木造駅舎が旅人を迎えてくれる。ここは今、世界的なホラーゲーム『SILENT HILL f』の舞台モデルになった街として、静かな注目を集めている。
駅周辺の様子

駅舎の中に一歩足を踏み入れれば、そこには古き良き鉄道旅の情景が。改札口のないシンプルな構造に、どこか懐かしい安心感を覚えた。

駅前で迎えてくれる「WELCOME」のアーチ。あしらわれたギフチョウのデザインは、ここが貴重な生息地であることを示している。街の入り口に、その土地の自然が誇らしく描かれていた。

日没直後、空が「ブルーモーメント」に染まる時間。昭和レトロな建物が並ぶ通りには、現実感と非現実感が入り混じる空気だった。

歩いていても、すれ違う人はほとんどいなかった。シーンと静まり返った空気に、ふとゲームの世界に入り込んだような錯覚を覚えた。この街が舞台モデルに選ばれた理由を、理屈ではなく肌で感じた瞬間だった。

山に囲まれた街の夜は、驚くほど早く訪れる。山の稜線に太陽が隠れた途端、周囲の光がすーっと消えていき、街全体が深い夜へと飲み込まれていった。

馬瀬川のほとりに佇む、静かな祠。その傍らには、飛騨に伝わる伝説の異形、「両面宿儺(りょうめんすくな)」を祀る石碑があった。土地の伝説が、今もこうして日常の風景に溶け込んでいる。飛騨の奥行きの深さを感じずにはいられなかった。

空が茜色から紫へと移り変わる、もっとも美しい時間。黒く切り取られた山のシルエットが、この街が山と共に生きていることを無言で語っていた。

ふと迷い込んだ、細い石畳の道。かつての飛騨街道だろうか。往時の賑わいの記憶が、建物の壁や足元の石に染み付いているような気配さえ感じた。

暗い路地を抜け、再び商店街へ。一つひとつの街灯が放つ明かりが、これほどまでに心強く、温かく感じられるのは、夜散歩ならではかもしれない。

飛騨金山を象徴する「筋骨(きんこつ)」の入口が目に入った。公道でありながら私有地をすり抜けるように通る、迷路のような極細路地だ。橋の下さえも道にしてしまうその佇まいに、この街のしなやかな生活の知恵を感じた。今回は中まで入らなかったので、次回はぜひ昼間に歩いてみたいと思う。

飛騨川に架かる橋の上から。川面は吸い込まれそうな漆黒、対岸の街灯りがかすかに揺れるだけ。都会では決して味わえない「本当の夜の暗さ」がここにあった。

ようやく駅まで戻ってきた。遠くにホームの明かりが見えたときの安堵感。暗く、どこか神秘的な山間の街を歩き抜けた後だからこそ、その灯火はこの夜で一番の温もりを持って、私を迎え入れてくれた。
飛騨金山駅の周辺を歩いた動画
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